【音声配信】ホンダ シビック歴代モデルの概要
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目次
ホンダ シビックの概要
ホンダ シビックは、1972年の初代モデル登場以来、半世紀以上にわたり、常に世界のコンパクトカー市場の指標であり続けてきた、ホンダを代表するグローバルカーです。特に、当時の厳しい排出ガス規制を世界で初めてクリアした画期的な「CVCCエンジン」は、ホンダの技術力を世界に示し、その後のブランドの礎を築きました。「市民の、みんなのクルマ」という名に相応しく、多くの人々の生活に寄り添いながら、時代の要請に応えてきました。
歴代シビックを貫くのは、単なる実用車に留まらない、ドライバーの心を昂らせる「走る楽しさ」への妥協なき追求です。軽快なハンドリング、高効率でよく回るエンジン、そしてその頂点に君臨する究極のピュアスポーツ「タイプR」の存在は、シビックのスポーティなイメージを決定づけています。時代と共にデザインやパワートレイン(最新世代ではe:HEV)を大きく変化させながらも、その根底に流れる「人中心」の思想と革新への情熱こそが、シビックが特別な一台であり続ける理由なのです。
ホンダ シビックの歴代モデル概要
初代 シビック (SB1/SG/SE/VB型)
- 販売期間:1972年7月 – 1979年7月
- 型式:SB1, SG, SE, VB など
- 特徴:
- ホンダ初の本格的な小型乗用車として登場した初代シビック。その名を世界に知らしめたのは、1973年に追加された革新的な低公害エンジン「CVCC」です。当時世界で最も厳しいとされた米国の排出ガス規制法「マスキー法」を、後処理装置なしで世界で初めてクリアし、ホンダの技術力を世界に証明しました。
- エクステリアは、合理的でクリーンな2ボックススタイル。FFレイアウトと4輪独立懸架の採用により、コンパクトなボディながら広い室内空間と、軽快なハンドリングを実現しました。
- スポーティグレード「RS」も設定され、後のシビックのスポーティなイメージの原点となりました。
2代目 シビック (通称:スーパーシビック SL/SS/SR/ST/VC/WD型)
- 販売期間:1979年7月 – 1983年9月
- 型式:SL, SS, SR, ST, VC, WD など
- 特徴:
- 「スーパーシビック」の愛称で親しまれ、初代のコンセプトを継承しつつ、内外装の質感と快適性を大幅に向上させた2代目。よりクリーンで洗練されたワンモーションフォルムのデザインが特徴です。
- パワートレインは、CVCCエンジンをさらに進化させた「CVCC-II」を搭載。1.3Lと1.5Lの2種類が設定され、燃費性能と走行性能を高次元で両立しました。
- ボディバリエーションも、3ドアハッチバック、5ドアハッチバック、4ドアセダン、そしてステーションワゴンの「カントリー」と、多彩なラインナップで幅広いニーズに応えました。
3代目 シビック (通称:ワンダーシビック AG/AH/AJ/AK/AT型)
- 販売期間:1983年9月 – 1987年9月
- 型式:AG, AH, AJ, AK, AT など
- 特徴:
- ホンダの「M・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想」を具現化した、低くワイドなロングルーフデザインが特徴的な「ワンダーシビック」。その斬新なスタイリングと卓越した走行性能で、1983-1984日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。
- ボディタイプは、3ドアハッチバック、4ドアセダン、そして5ドアワゴンの「シャトル」の3種類。特に3ドアハッチバックの軽快な走りは、多くの若者を魅了しました。
- パワートレインのハイライトは、F1で培った技術をフィードバックした、1.6L DOHC16バルブエンジン「ZC」型の搭載です。そのパワフルな走りは、「シビック=スポーティ」というイメージを決定づけました。
4代目 シビック (通称:グランドシビック EF系)
- 販売期間:1987年9月 – 1991年9月
- 型式:EF系
- 特徴:
- 「グランドシビック」の愛称で知られ、より低くワイドな、未来的なスタイリングへと進化。視界の良さと開放感あふれる室内空間も特徴でした。
- この世代の最大の技術的トピックは、自然吸気エンジンでありながらリッターあたり100馬力を達成した、画期的な可変バルブタイミング・リフト機構「VTEC」を搭載した1.6L DOHCエンジン「B16A」型の登場です。高回転域での官能的な吹け上がりと圧倒的なパワーは、世界中のエンジン技術者に衝撃を与えました。
- 足回りには、4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションを全車に採用。卓越したハンドリング性能と快適な乗り心地を両立させ、走りのレベルを新たな次元へと引き上げました。
5代目 シビック (通称:スポーツシビック EG系)
- 販売期間:1991年9月 – 1995年9月
- 型式:EG系
- 特徴:
- 「スポーツシビック」の愛称通り、より流麗で空力性能に優れた、エモーショナルなスタイリングへと進化。特に3ドアハッチバックは、その低いシルエットと軽快な走りで、モータースポーツシーンでも大活躍しました。
- VTECエンジンはさらに進化。1.5Lには燃費志向の「VTEC-E」が、1.6Lの「SiR」にはより高出力化されたDOHC VTECが搭載されるなど、バリエーションが拡大しました。
- 使い勝手の面では、上下2分割式のテールゲート(3ドア)が特徴的。安全性も向上し、運転席SRSエアバッグが全車標準装備となりました。
6代目 シビック (通称:ミラクルシビック EK系)
- 販売期間:1995年9月 – 2000年9月
- 型式:EK系
- 特徴:
- 「ミラクルシビック」の愛称で親しまれ、走行性能、安全性、環境性能を高次元でバランスさせた6代目。3ドアハッチバックと4ドアセダン「フェリオ」をラインナップ。
- パワートレインには、低燃費から高出力まで3つの異なる特性を1つのエンジンで実現する「3ステージVTEC」エンジンを搭載。ホンダマチックS(CVT)との組み合わせで、優れた燃費性能と走る楽しさを両立しました。
- そして、この世代の歴史に燦然と輝くのが、1997年8月に追加された、初代「シビック タイプR」(EK9型)の存在です。職人の手作業によるポート研磨が施された1.6L DOHC VTECエンジン「B16B」型は185馬力を発生。軽量化されたボディ、強化された足回りを持ち、そのレーシングカーのような走りは、今なお伝説として語り継がれています。
7代目 シビック (EU/ES/EP系)
- 販売期間:2000年9月 – 2005年9月
- 型式:EU系 (5ドアHB), ES系 (4ドアセダン「フェリオ」), EP系 (3ドアHB タイプR)
- 特徴:
- 「スマート・コンパクト」をコンセプトに、従来のスポーティ路線から、広い室内空間と使いやすさを重視したファミリーカー路線へと大きく転換。FFプラットフォームの利点を活かしたフラットフロアと、高い全高により、広々とした室内空間を実現しました。
- 衝突安全性能も大幅に向上させ、世界トップレベルを目指した「Gコントロール技術」を採用。
- パワートレインでは、シビックとして初のハイブリッドモデル「シビック ハイブリッド」(IMAシステム搭載)が登場。優れた環境性能を誇りました。
- 2代目「シビック タイプR」(EP3型)は、英国工場で生産されたモデルを輸入する形で販売。2.0L i-VTECエンジンを搭載し、これまでのB型エンジンとは異なる特性の走りを提供しました。
8代目 シビック (FD/FA系 – 日本国内セダンのみ)
- 販売期間(日本):2005年9月 – 2010年8月
- 型式:FD系
- 特徴:
- この世代から、シビックは各地域のニーズに合わせて異なるボディタイプを展開するグローバル戦略を採用。日本市場では、4ドアセダンのみが販売されました(ハッチバックは欧州専用など)。
- エクステリアは、先進的でスポーティなワンモーションフォルム。インテリアでは、速度計とタコメーターを上下に分割した「マルチプレックスメーター」が特徴的でした。
- ハイブリッドモデルは、1.3L IMAシステムを搭載し、さらに燃費性能を向上させました。ガソリンモデルは1.8L i-VTECエンジンを搭載。
- そして、この世代の「シビック タイプR」(FD2型)は、再び日本国内で生産された4ドアセダンとして登場。2.0L DOHC i-VTECエンジン「K20A」は225馬力を発生し、そのサーキット走行を前提とした硬派なセッティングは、歴代でも屈指のスパルタンなモデルとして知られています。
9代目 シビック (日本市場ではタイプRユーロを除き、ほぼ不在)
- 販売期間(日本):2009年-2012年 (タイプRユーロのみ限定販売)
- 特徴:
- この9代目シビックは、主に北米市場などをターゲットとしたモデルであり、日本国内ではハッチバックやセダンといった標準モデルは正式に販売されませんでした。当時のホンダは、国内のコンパクトカー市場ではフィットに注力する戦略をとっていました。
- 唯一、欧州で生産された3ドアハッチバックの高性能モデル「シビック タイプR EURO」が、2009年と2010年に数量限定で輸入販売され、日本のファンにとっては貴重な存在となりました。
10代目 シビック (FC/FK系)
- 販売期間(日本):2017年9月 – 2021年8月
- 型式:FC1 (セダン), FK7 (ハッチバック), FK8 (タイプR)
- 特徴:
- 「DYNAMIC V!」をコンセプトに、世界戦略車として開発されたグローバルモデルが、満を持して日本市場に復活。ロー&ワイドな、ダイナミックでスポーティなスタイリングが大きな特徴です。
- ボディタイプは、4ドアセダンと5ドアハッチバック、そして究極のパフォーマンスモデル「タイプR」の3種類をラインナップ。
- パワートレインには、ダウンサイジングコンセプトの1.5L直噴VTEC TURBOエンジンを初採用。優れた動力性能と燃費性能を両立させました。
- 「シビック タイプR」(FK8型)は、2.0L VTEC TURBOエンジンを搭載し、最高出力320PSを発生。ニュルブルクリンク北コースで当時のFF車最速ラップを記録するなど、その圧倒的なパフォーマンスで世界中の度肝を抜きました。
- 先進安全運転支援システム「Honda SENSING」も搭載され、走りだけでなく安全性も大幅に向上しました。
11代目 シビック (FE/FL系)
- 販売期間(日本):2021年9月 – 現在 (2025年6月時点)
- 型式:FE系 (e:HEV), FL系 (ガソリン/タイプR)
- 特徴:
- 「爽快シビック」をグランドコンセプトに、従来のスポーティ路線を継承しつつ、より上質で洗練された、乗る人全員が心地よさを感じられるクルマへと進化。日本市場では、5ドアハッチバックのみの展開となります。
- エクステリアは、水平基調でクリーン、かつ伸びやかなデザインへと刷新。視界の良さにも徹底的にこだわり、運転のしやすさと開放感を高めています。インテリアも、上質な素材と、直感的に操作できるスイッチ類を配置した、シンプルで機能的なデザインが特徴です。
- パワートレインの主役は、2.0L直噴エンジンと2モーターを組み合わせた、新開発のスポーツe:HEV(イーエイチイーブイ)です。EVのような滑らかでレスポンスの良い走り、そして静粛性を実現し、従来のハイブリッドのイメージを覆す爽快なドライビング体験を提供。1.5L VTEC TURBOエンジン搭載車も設定。
- 「シビック タイプR」(FL5型)も2022年に登場。先代を上回るパフォーマンスと、洗練されたデザイン、そしてサーキットでの速さと公道での快適性を高次元で両立させ、「究極のFFスポーツ」として高い評価を得ています。
- 安全性能では、最新世代の「Honda SENSING」を全車標準装備。アダプティブドライビングビームや渋滞運転支援機能(トラフィックジャムアシスト)などを搭載し、安全性と快適性をさらに向上。この11代目は、シビックが長年培ってきた「走る楽しさ」を、新時代の価値観と共に提供する意欲作です。