【音声配信】トヨタ クラウン歴代モデルの概要
この記事の概要を音声で配信しています。
目次
トヨタ クラウンの概要
トヨタ クラウンは、1955年の初代モデル誕生から約70年にわたり、常に日本の高級車の象徴として、そしてトヨタの技術と品質の象徴として、その歴史を刻み続けてきました。「いつかはクラウン」という有名なキャッチフレーズは、単なる宣伝文句ではなく、多くの日本人にとっての憧れと成功のシンボルそのものでした。いつの時代も、最高のおもてなしと快適な移動空間、そして安心感を提供することを使命としてきました。
歴代クラウンを貫くのは、信頼性、耐久性、そして静かで快適な乗り心地という、高級車としての不変の価値です。しかし、その伝統に安住することなく、時代の変化に合わせてハイブリッド技術の導入や先進安全装備の搭載を積極的に行い、革新を続けてきました。特に16代目では、セダンという枠組みを超え、多様なライフスタイルに応えるクロスオーバー、スポーツといったモデル群へと大胆な変革を遂げ、クラウンの新たな未来を提示しています。
トヨタ クラウンの歴代モデル概要
初代 クラウン (S30系)
- 販売期間:1955年1月 – 1962年9月
- 型式:RS型, RS2#型, RS3#型
- 特徴:
- 純国産技術で開発された初の本格的な乗用車として、日本の自動車産業の黎明期を象徴するモデル。「トヨペット・クラウン」として誕生しました。
- フロントドアが前ヒンジ、リアドアが後ろヒンジの「観音開き」ドアや、前輪独立懸架(ダブルウィッシュボーン式)を採用するなど、当時としては極めて先進的な設計が特徴でした。
- タクシーやハイヤーとしても広く採用され、その高い耐久性と信頼性で、後のクラウン神話の礎を築きました。
2代目 クラウン (S40系)
- 販売期間:1962年9月 – 1967年9月
- 型式:S4#型
- 特徴:
- 「フラットデッキスタイル」と呼ばれる、直線的でモダンなヨーロピアンスタイルのデザインを採用。国産車で初めてオートマチックトランスミッション「トヨグライド」を搭載し、高級車としての快適性を大きく向上させました。
- 日本の高速道路網の整備を見据え、高速走行性能を大幅に向上。2.6L V型8気筒エンジンを搭載した「クラウンエイト」も登場し、日本のVIPカー市場を開拓しました。
- この世代から、セダンに加え、ステーションワゴンの「カスタム」や商用バンもラインナップされ、多様なニーズに応えました。
3代目 クラウン (S50系)
- 販売期間:1967年9月 – 1971年2月
- 型式:S5#型
- 特徴:
- 「白いクラウン」という有名なキャッチコピーと共に、オーナードライバーを強く意識したパーソナルな高級車へと舵を切った世代。日本のマイカー時代の本格的な到来を象徴するモデルです。
- エクステリアは、日本の美意識を取り入れた曲線的なデザインが特徴。ラインナップに、スタイリッシュな2ドアハードトップが初めて加わり、若々しい層にもアピールしました。
- 安全性への配慮も進み、衝撃吸収ボディや3点式シートベルトなどを採用。この世代で、クラウンは国内での累計生産台数100万台を達成しました。
4代目 クラウン (S60/S70系)
- 販売期間:1971年2月 – 1974年10月
- 型式:S6#/S7#型
- 特徴:
- 「スピンドル・シェイプ(紡錘形)」と呼ばれる、ボディと一体化した前後バンパーを持つ、極めて先進的で個性的なスタイリングを採用。「クジラ」の愛称で親しまれましたが、その斬新さゆえに、保守的な層からは敬遠され、商業的には苦戦を強いられた世代としても知られています。
- セダン、2ドア/4ドアハードトップ、ワゴンという多彩なボディバリエーションを展開。
- 電子制御燃料噴射装置(EFI)や電動リクライニングシート、4輪アンチスキッドブレーキ(ABS)など、当時の最先端技術が意欲的に投入されました。
5代目 クラウン (S80/S90/S100系)
- 販売期間:1974年10月 – 1979年9月
- 型式:S8#/S9#/S10#型
- 特徴:
- 先代の反省から、エクステリアデザインは直線基調で重厚感のある、高級車らしい威厳に満ちたスタイルへと回帰。これにより、再び多くのユーザーから支持を集め、販売台数を回復させました。
- 豪華で静粛な室内空間を徹底的に追求。「ロイヤルサルーン」という最上級グレードが初めて設定され、その後のクラウンのグレード体系の基礎を築きました。
- パワートレインは、排出ガス規制への対応が大きなテーマとなり、触媒方式などを採用。2.6L直列6気筒エンジンなども搭載されました。
6代目 クラウン (S110系)
- 販売期間:1979年9月 – 1983年8月
- 型式:S11#型
- 特徴:
- 「日本の薫り」をテーマに、より洗練されたスタイリングと、快適性を追求した世代。クリスタル調のCピラーエンブレムも特徴的でした。
- この世代のハイライトは、日本の高級車として初めてターボチャージャー付エンジン(2.0L M-TEU型)を搭載したことです。これにより、優れた動力性能と経済性を両立させました。
- クルーズコントロールやマイコン式オートエアコンなど、電子技術を駆使した快適装備も積極的に採用。高級車としての先進性をアピールしました。
7代目 クラウン (S120系)
- 販売期間:1983年8月 – 1987年9月
- 型式:S12#型
- 特徴:
- 「いつかはクラウン」という歴史に残るキャッチフレーズと共に、多くの人々の憧れの象徴となった世代。日本の高度経済成長期の集大成とも言えるモデルです。
- 技術的には、4輪独立懸架(セミトレーリングアーム式リアサスペンション)の採用や、日本初のスーパーチャージャー付エンジン(3.0L DOHCの「ロイヤルサルーンG」に搭載された6M-GEU型は後にスーパーチャージャー付の「6M-GZEU型」に発展)など、走行性能の向上が図られました。
- 内外装の質感も飛躍的に向上し、高級車としての地位を不動のものとしました。
8代目 クラウン (S130系)
- 販売期間:1987年9月 – 1991年10月 (セダン・ワゴンは継続)
- 型式:S13#型
- 特徴:
- 日本のバブル経済絶頂期に登場し、豪華さと先進技術を極めた世代。ペリメーターフレーム構造を採用した最後のクラウンでもあります。
- 電子制御エアサスペンションやトラクションコントロール(TRC)といった、当時の最先端技術を惜しみなく投入。CD-ROMナビゲーションシステムもオプション設定されました。
- パワートレインは、3.0L直列6気筒DOHCエンジンをはじめ、多様なラインナップを用意。1990年には、V型8気筒エンジンを搭載した、より上級な派生モデル「クラウンV8」(後のマジェスタの源流)も登場しました。
9代目 クラウン (S140系)
- 販売期間:1991年10月 – 1995年8月
- 型式:S14#型
- 特徴:
- 従来のフレーム構造から、軽量で高剛性なフルモノコックボディへと全面的に移行した、クラウンの歴史における大きな転換期。これにより、走行性能と安全性が飛躍的に向上しました。
- エクステリアデザインは、より丸みを帯びた流麗なスタイルへと進化。この世代から、従来のクラウン(ロイヤルシリーズ)と、より大型で豪華な「クラウン マジェスタ」という2つのシリーズ展開が明確になりました。
- パワートレインには、新開発の直列6気筒「JZS」系エンジン(2.5L/3.0L)を搭載。トランスミッションも電子制御5速ATが採用されるなど、メカニズムも一新されました。
10代目 クラウン (S150系)
- 販売期間:1995年8月 – 1999年9月
- 型式:S15#型
- 特徴:
- バブル崩壊後の価値観の変化に応え、豪華さよりも安全性や基本性能を重視した世代。衝突安全ボディ「GOA」をトヨタ車として初採用し、ABSやデュアルエアバッグを全車標準装備するなど、安全性の向上に注力しました。
- エクステリアは、先代の流麗さを引き継ぎつつ、より落ち着いたデザインに。ハードトップモデルは、センターピラーを持つピラードハードトップとなり、ボディ剛性を高めました。
- パワートレインは、JZS系エンジンを継続採用しつつ、可変バルブタイミング機構「VVT-i」を搭載し、性能と燃費を両立。4WDモデルも設定されました。
11代目 クラウン (S170系)
- 販売期間:1999年9月 – 2003年12月
- 型式:S17#W型
- 特徴:
- この世代から、スポーティなキャラクターを持つ「アスリート」シリーズが本格的に設定され、従来の「ロイヤル」シリーズとの2枚看板体制が確立。若々しい層にもアピールしました。
- パワートレインの大きなトピックは、量産乗用車として世界初のマイルドハイブリッドシステムを搭載したモデルが登場したことです。これは、その後のクラウンの電動化の第一歩となりました。また、2.5L直噴ターボエンジン「1JZ-GTE」搭載のアスリートVも設定され、高い動力性能を誇りました。
- ボディタイプとしては、この世代がステーションワゴン「クラウン エステート」をラインナップした最後のモデルとなります。
12代目 クラウン (S180系)
- 販売期間:2003年12月 – 2008年2月
- 型式:S18#型
- 特徴:
- 「かつて、クラウンだった。いま、クラウンである。」というキャッチコピーと共に、「ゼロからのスタート」を掲げ、プラットフォームからエンジン、デザインに至るまで全てを刷新した、まさに革命的な世代。「ゼロ・クラウン」の愛称で親しまれました。
- エクステリアは、ショートオーバーハングとロングホイールベースによる、ダイナミックでスポーティなセダンスタイルへと大変貌。従来のクラウンの保守的なイメージを覆しました。
- パワートレインは、長年続いた直列6気筒エンジンから、新開発のV型6気筒エンジン(2.5L/3.0L)へと全面移行。走行性能も大幅に向上し、欧州の高級セダンとも渡り合えるレベルを目指しました。
13代目 クラウン (S200系)
- 販売期間:2008年2月 – 2012年12月
- 型式:S20#型
- 特徴:
- 「感動性能」をキーワードに、ゼロ・クラウンで確立した革新性をさらに深化・熟成させた世代。内外装のデザインはより洗練され、高級車としての質感を高めました。
- この世代のハイライトは、本格的なハイブリッドシステム「THS II」を搭載した「クラウン ハイブリッド」が初めて設定されたことです。3.5L V6エンジンとモーターを組み合わせ、圧倒的な動力性能と優れた燃費性能を両立させました。
- 安全性能では、ドライバーの眼の開閉状態を検知するドライバーモニター付プリクラッシュセーフティシステムなど、世界最先端の安全技術を搭載。
14代目 クラウン (S210系)
- 販売期間:2012年12月 – 2018年6月
- 型式:S21#型
- 特徴:
- 「CROWN Re BORN」をスローガンに、再び大胆なデザイン革新に挑戦。特に、稲妻をモチーフとした巨大なフロントグリルは大きな話題を呼び、クラウンの新たな表情を創り出しました。ボディカラーに鮮やかなピンク(ReBORN PINK)を設定したことも象徴的でした。
- パワートレインは、2.5L V6エンジンを核とするハイブリッドシステムに加え、新たに2.0L直噴ターボエンジン搭載モデルを追加。ダウンサイジングターボによるスポーティな走りと環境性能を両立しました。
- 走行性能では、ニュルブルクリンクでの走り込みを通じて、卓越したハンドリング性能を追求。「FUN TO DRIVE」を体現した、走りの良いクラウンとして評価されました。
15代目 クラウン (S220系)
- 販売期間:2018年6月 – 2022年7月
- 型式:S22#型, AZSH2#型, GWS224型
- 特徴:
- TNGA(Toyota New Global Architecture)のFRプラットフォーム「GA-L」を初採用し、低重心でスポーティなセダンスタイルと、卓越した操縦安定性を実現。ニュルブルクリンクでの走り込みを継続し、意のままの走り」を徹底的に追求しました。
- エクステリアは、6ライトウインドウ(片側3つの窓)を持つ流麗なクーペ風セダンへと進化。インテリアも、上質な素材と先進的なデザインが融合した、ドライバーズカーとしての空間が創り出されました。
- 全車にDCM(専用通信機)を標準搭載した、初代コネクティッドカーとして登場。ITS Connectやヘルプネットなど、IT技術を活用した安全・安心サービスを提供しました。
- パワートレインは、2.0Lターボ、2.5Lハイブリッド、そして3.5Lマルチステージハイブリッドの3種類をラインナップ。特に3.5Lマルチステージハイブリッドは、力強く伸びやかな加速フィールを実現しました。
16代目 クラウン (S23#系)
- 販売期間:2022年9月(クロスオーバー) – 現在 (2025年6月時点)
- 型式:S23#型シリーズ (クロスオーバー、スポーツ、セダン、エステート)
- 特徴:
- クラウンの長い歴史上、最も大きな変革を遂げた世代。「これからのクラウン」を追求した結果、従来のセダンという枠組みを超え、多様な価値観に応える4つのボディタイプ(クロスオーバー、スポーツ、セダン、エステート)からなる「クラウンシリーズ」として生まれ変わりました。
- 第一弾として登場した「クロスオーバー」は、セダンとSUVを融合させた、リフトアップされたスタイリングが特徴。大径タイヤを装着し、これまでのクラウンとは全く異なる新しいシルエットを提示しました。
- 続いて、エモーショナルなデザインと走りを追求する「スポーツ」(SUV)、伝統的なFRセダンの価値を再定義する「セダン」、そしてアクティブなライフスタイルに応える「エステート」(SUV)が順次投入され(2025年6月時点では全モデルが市場に登場)、多様なニーズに対応。
- パワートレインは、2.5Lシリーズパラレルハイブリッドシステムに加え、クロスオーバーとスポーツには2.4Lターボエンジンとモーターを組み合わせた高性能な「デュアルブーストハイブリッドシステム」も設定。セダンはFCEV(燃料電池車)とマルチステージハイブリッド、スポーツはPHEVもラインナップするなど、全方位での電動化を推進しています。
- この16代目クラウンは、伝統の名に安住することなく、時代の変化に対応し、グローバル市場で再び輝きを放つための、トヨタの強い意志が込められた、まさに「革新と挑戦」を象徴するシリーズです。