【音声配信】日産 キックス歴代モデルの概要
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目次
日産 キックスの概要
日産 キックスは、日本市場において、時代と共にその姿を劇的に変えてきた、非常に興味深い歴史を持つクロスオーバーSUVです。2008年に登場した初代は、三菱パジェロミニのOEM供給を受けた軽自動車の本格オフローダーとして、そのタフな走破性で一部のファンから根強い支持を得ました。一度その歴史に幕を閉じますが、その名は全く新しい形で復活を遂げます。
2020年に再登場した2代目は、グローバル市場で展開されるBセグメントのコンパクトクロスオーバーへと生まれ変わりました。その最大の特徴は、日産独自の電動パワートレイン「e-POWER」を搭載していることです。電気自動車さながらの滑らかで力強い加速と優れた静粛性、そして先進の運転支援技術「プロパイロット」を武器に、現代の都市型SUVとして新たな価値を提示。同じ車名でありながら、その中身は時代を映す鏡のように大きく変貌した、日産の電動化戦略を象徴する一台なのです。
日産 キックスの歴代モデル概要
初代 キックス (H59A型)
- 販売期間:2008年10月 – 2012年6月
- 型式:H59A
- 特徴:
- 初代キックスは、三菱自動車工業からOEM供給を受けたモデルであり、そのベースは軽自動車の本格オフローダーとして名高い「パジェロミニ」でした。つまり、成り立ちとしては軽自動車に分類されます。
- エクステリアは、パジェロミニ譲りのスクエアでタフなスタイリング。背面スペアタイヤや高い最低地上高が、その本格的な出自を物語っていました。日産独自の意匠として、専用デザインのフロントグリルなどが与えられました。
- 最大の特徴は、ラダーフレーム構造のボディと、2H(後輪駆動)/4H(高速四駆)/4L(低速四駆)の切り替えが可能な、副変速機付きのパートタイム4WDシステムを搭載していた点です。これにより、コンパクトな軽自動車でありながら、悪路で高い走破性を発揮しました。
- パワートレインは、660cc 直列4気筒インタークーラーターボエンジン「4A30」型に、4速ATが組み合わされました。快適性や燃費性能よりも、悪路走破性を重視した、非常に硬派で趣味性の高い一台でした。
2代目 キックス (P15型)
- 販売期間:2020年6月 – 現在 (2025年6月時点)
- 型式:P15型系 (P15, SP15)
- 特徴:
- 約8年の時を経て、全く新しいグローバルモデルとして復活した2代目。初代とは異なり、タイで生産されるBセグメントのコンパクトクロスオーバーSUVとして日本市場に導入されました。コンセプトは「e-POWERとプロパイロットを搭載した、新しい時代のSUV」。
- エクステリアは、日産のデザイン言語「Vモーション」を取り入れた大型のフロントグリルと、シャープなLEDヘッドランプ、そしてルーフが浮いて見える「フローティングルーフ」デザイン(2トーンカラー設定あり)が特徴。都会的でスタイリッシュな印象へと生まれ変わりました。
- インテリアも、上質な素材と先進的なデザインを融合させたモダンな空間。「ゼログラビティシート」の採用により、長距離運転でも疲れにくい快適性を実現しています。
- パワートレインは、日本市場では日産独自の電動パワートレイン「e-POWER」専用車として導入されたことが最大のトピックです。1.2L「HR12DE」型エンジンを発電専用とし、駆動は100%モーターで行うことで、電気自動車のような滑らかで力強い加速と優れた静粛性を実現。「ワンペダルドライブ」も、その新しい運転感覚で注目されました。
- 安全性能では、高速道路の同一車線での運転支援技術「プロパイロット」を多くのグレードに標準装備。インテリジェントエマージェンシーブレーキやSOSコールなども搭載し、高い安全性を確保しました。
- 主な改良・出来事:
- 2022年7月:マイナーチェンジ。第2世代「e-POWER」システムへと進化し、モーター出力を向上させるとともに、静粛性も大幅に改善。さらに、後輪をモーターで駆動する本格的な電動4WDシステム「e-POWER 4WD」搭載モデルが追加され、悪路や雪道での走行安定性が飛躍的に向上しました。インテリアの質感向上や、インテリジェントキーが後席ドアにも対応するなど、細部の使い勝手も改善されています。
- 2025年現在も、e-POWERによる独自の魅力とスタイリッシュなデザインで、コンパクトSUV市場において独自のポジションを築いています。