【音声配信】スズキ ワゴンR歴代モデルの概要
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目次
スズキ ワゴンRの概要
スズキ ワゴンRは、1993年の初代モデルの衝撃的なデビューと共に、日本の軽自動車市場に「軽ハイトワゴン」という新たなカテゴリーを創造し、瞬く間にその頂点へと駆け上がった、まさに革命的な一台です。限られた軽自動車規格の中で、最大限の室内空間効率と優れた実用性を追求するという、その明快かつ大胆なコンセプトは、当時の常識を覆し、多くの人々のカーライフに新たな可能性を提示しました。
歴代ワゴンRを貫くのは、常にユーザーの視点に立ち、日常の使い勝手を徹底的に磨き上げ、誰もが気軽にその恩恵を享受できるクルマを提供するという、スズキならではの実直なクルマづくりです。時代ごとのニーズを的確に捉え、燃費性能の向上、先進安全技術の搭載、そして運転する楽しさをも進化させながら、常に軽自動車のスタンダードを更新。ワゴンRは、日本の生活様式に深く根差し、幅広い層から愛され続ける、スズキを代表する金字塔と言えるでしょう。
スズキ ワゴンRの歴代モデル概要
初代 ワゴンR (CT21S/CV21S/CT51S/CV51S型)
- 販売期間:1993年9月 – 1998年10月
- 型式:CT21S, CV21S (前期 F6Aエンジン), CT51S, CV51S (後期 K6Aエンジン)
- 特徴:
- 「クルマの新しいカタチ」を提案し、従来の軽自動車の概念を打ち破るトールボーイスタイルで市場に鮮烈デビュー。圧倒的な室内空間の広さと優れた乗降性を実現し、「軽ハイトワゴン」という新たなジャンルを確立した、まさに歴史的な一台です。
- 当初は運転席側に1枚、助手席側に2枚のヒンジドアというユニークな1+2ドア構成(後に2+2ドアも追加)を採用。縦長のテールランプも特徴的でした。インテリアは、コラムシフトとベンチ風シートにより、ウォークスルーも可能な広々とした空間を実現。
- パワートレインには、F6A型660ccエンジン(自然吸気およびターボ)を搭載。1997年のマイナーチェンジでは、新開発のK6A型オールアルミエンジン(自然吸気およびターボ)へと換装され、動力性能と静粛性が向上しました。
- 1995年にはスポーティモデル「RR(ダブルアール)」が登場。専用エアロパーツやローダウンサスペンション、パワフルなターボエンジンを搭載し、走りを重視する層からも高い支持を得ました。この初代の成功が、その後の軽自動車市場の方向性を決定づけたと言っても過言ではありません。
2代目 ワゴンR (MC21S/MC11S/MC22S/MC12S型)
- 販売期間:1998年10月 – 2003年9月
- 型式:MC21S/MC11S (前期), MC22S/MC12S (後期)
- 特徴:
- 1998年の軽自動車規格改定(全長・全幅の拡大)に合わせてフルモデルチェンジ。「My Way WAGON」をコンセプトに、初代の魅力を継承しつつ、安全性と質感を大幅に向上させました。エクステリアは、より丸みを帯び洗練されたデザインへと進化。
- 新開発プラットフォームを採用し、ダイハツの「TAF(Total Advanced Function body)」に相当するスズキ独自の衝突安全ボディを採用。オフセット衝突にも対応するなど、当時の軽自動車として最高レベルの安全性を確保しました。
- パワートレインは、オールアルミ製K6A型エンジン(自然吸気DOHC、DOHC Mターボ、DOHCインタークーラーターボ)に集約。特にスポーティグレード「RR」には、軽自動車初の直噴(DI)ターボエンジンも設定され、高出力と低燃費を両立しました。
- インテリアは、質感の向上と共に収納スペースの充実が図られました。コラムシフトと前席ウォークスルーは引き続き採用。標準モデルのほか、個性的な「FMエアロ」や豪華装備の「リミテッド」シリーズ、そして高性能な「RR」シリーズと、多彩なバリエーションで幅広いニーズに応えました。
3代目 ワゴンR (MH21S/MH22S型)
- 販売期間:2003年9月 – 2008年9月
- 型式:MH21S (前期), MH22S (後期)
- 特徴:
- 「Heartful Technology WAGON」をテーマに、デザイン、快適性、走行性能、安全性のすべてを磨き上げた3代目。プラットフォームを一新し、ホイールベースを延長することで、室内空間のさらなる拡大と操縦安定性の向上を実現しました。
- エクステリアデザインは、よりシャープでモダンな印象に。標準モデルとスポーティな「RR」シリーズに加え、2007年2月には、大胆なフロントグリルとプロジェクター式ヘッドランプを持つ、精悍でスタイリッシュな派生モデル「ワゴンR スティングレー」が初登場。これが若者層を中心に大ヒットし、ワゴンRの新たな柱となりました。
- パワートレインは、K6A型エンジン(自然吸気DOHC、DOHC Mターボ、DOHCインタークーラーターボ、直噴ターボ)を継続採用しつつ改良。一部グレードにはCVTも設定されました。
- インテリアは、質感の向上と共に、キーレススタートシステムやオートエアコンなどの先進装備を積極的に採用。使い勝手の良い収納スペースも豊富に用意されました。この世代は、ワゴンRが単なる実用車から、デザインや上質感も重視される存在へと進化したことを示すモデルです。
4代目 ワゴンR (MH23S型)
- 販売期間:2008年9月 – 2012年9月
- 型式:MH23S
- 特徴:
- 「Daily Adventure」をコンセプトに、日常の中の小さな冒険や楽しさを演出するクルマとして開発。プラットフォームを再度一新し、ホイールベースをさらに延長。これにより、特に後席の足元スペースが大幅に拡大し、軽自動車とは思えないほどの広々とした室内空間を実現しました。
- エクステリアデザインは、よりダイナミックで躍動感のあるスタイルへと進化。標準モデルに加え、先代で大成功を収めた「スティングレー」は独立したシリーズとして継続設定され、専用デザインのフロントマスクやエアロパーツでスポーティさを強調しました。初代から続いた「RR」の名称は、この世代ではスティングレーの上級グレード等に一部残る形となりました。
- パワートレインは、K6A型エンジン(自然吸気およびターボ)を搭載。トランスミッションは、NA車にはCVTと4AT/5MT、ターボ車にはCVTが組み合わされ、燃費性能と走行性能の両立が図られました。
- キーレスプッシュスタートシステムやフルオートエアコン、イモビライザーなど、快適・安全装備も充実。日常の使い勝手を高める工夫が随所に見られました。この世代は、ワゴンRの「広さ」と「使いやすさ」を新たな次元へと引き上げたモデルと言えるでしょう。
5代目 ワゴンR (MH34S/MH44S型)
- 販売期間:2012年9月 – 2017年2月
- 型式:MH34S (エネチャージ/スマートアシスト搭載車), MH44S (S-エネチャージ搭載車)
- 特徴:
- 「新基準 国民的軽ワゴン」を目指し、スズキの次世代環境技術「スズキグリーンテクノロジー」を全面採用。軽量化と高効率化を徹底的に追求し、クラストップレベルの低燃費を実現した、まさにエコ技術のショーケースのような一台でした。
- エクステリアデザインは、標準モデルとスティングレーで明確なキャラクター分けを継続。空力性能も考慮された、より洗練されたスタイリングとなりました。
- 最大のトピックは、新開発R06A型エンジンと、減速エネルギー回生機構「エネチャージ」、蓄冷材を用いたアイドリングストップ時専用クーラー「ECO-COOL(エコクール)」といった革新技術の採用です。これにより、NA・2WD車でJC08モード燃費28.8km/L(当時)を達成。さらに2014年8月には、ISG(モーター機能付発電機)を用いたマイルドハイブリッドシステム「S-エネチャージ」搭載車(MH44S型)が追加され、燃費は32.4km/L(当時)まで向上しました。
- 安全性能では、レーザーレーダー方式の衝突被害軽減ブレーキ「レーダーブレーキサポート」や誤発進抑制機能などをパッケージ化した「スマートアシスト」を一部グレードに初搭載。軽自動車の安全基準向上にも貢献しました。
6代目 ワゴンR (MH35S/MH55S/MH85S/MH95S型)
- 販売期間:2017年2月 – 現在 (2025年5月時点)
- 型式:MH35S (NA FF/4WD), MH55S (マイルドハイブリッド NA/ターボ FF/4WD), MH85S (NA FF/4WD マイナーチェンジ後), MH95S (マイルドハイブリッド NA FF/4WD マイナーチェンジ後)
- 特徴:
- 「軽ワゴン、完成の域へ。」という自信と共に、軽量高剛性の新プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」を核に、デザイン、パッケージング、安全性能、走行性能の全てを刷新した6代目。まさに、ワゴンRの集大成とも言えるモデルです。
- エクステリアは、標準モデル(FA、HYBRID FX)がよりシンプルで機能的なデザイン、そしてスポーティな「スティングレー」(HYBRID X、HYBRID T)はシャープで存在感のあるデザインを採用し、キャラクターを明確化。2022年8月には、スティングレーとは異なるテイストの新たなカスタムモデル「ワゴンR カスタムZ」が登場し、選択肢を広げています。
- 室内空間は、ホイールベースの拡大やパッケージングの最適化により、さらに広々とした快適な空間を実現。特に後席の居住性や荷室の使い勝手が向上しました。軽自動車初のヘッドアップディスプレイ(カラー)も採用(グレード別)。
- パワートレインは、R06A型エンジンをベースに、自然吸気エンジン車(FAグレード)と、ISGを用いたマイルドハイブリッドシステム搭載車(HYBRID FX、HYBRID FZ、スティングレー全車、カスタムZ全車)を設定。マイルドハイブリッド車は、優れた燃費性能とスムーズな加速を両立。ターボエンジンもマイルドハイブリッドと組み合わされます(スティングレーHYBRID T、カスタムZ HYBRID ZT)。
- 安全性能では、予防安全技術「スズキ セーフティ サポート」が大幅に進化。単眼カメラとレーザーレーダー(後期型ではデュアルカメラ)による衝突被害軽減ブレーキ「デュアルセンサーブレーキサポート(DSBS)」や「デュアルカメラブレーキサポート」、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、ハイビームアシストなどを搭載。アダプティブクルーズコントロール(ACC)もスティングレーやカスタムZのターボ車に設定され、軽自動車の安全基準をリードし続けています。2025年5月現在も、細かな改良や装備の充実が図られ、高い商品力を維持しています。