タイヤ交換の溝は1か所だけでなく、複数の位置を見る
タイヤの交換時期は、残り溝だけでは決められません。空気圧が不足したまま走っていないか、傷やひび、異物がないか、内側や外側だけ減っていないか、何年使っているかまで分けて見ると判断しやすくなります。
大切なのは、自分で故障原因まで特定することではなく、「いつもと違う状態」を早く見つけることです。月1回の確認で見る場所と、専門店へつなぐ目安を順番に整理します。
月1回のタイヤ点検では、「指定空気圧→溝→傷・ふくらみ→偏摩耗→使用年数」の順で見ると確認しやすくなります。見た目だけで判断せず、空気圧はエアゲージで測ります。
スリップサインの露出、コードに達する傷、局部的なふくらみ、急な空気圧低下などがあれば、「あと何km使えるか」を考えるより、走行を続ける前にタイヤ販売店や整備工場へ相談することが先です。
最初に確認するのは、その車の「指定空気圧」
空気圧を見るときは、タイヤ側面に書かれた数字を基準にするのではなく、車両に指定された空気圧を確認します。多くの車では、取扱説明書や運転席ドアを開けた周辺のラベルなどで確認できます。
同じ車名でも、年式、型式、装着するタイヤサイズなどによって指定値が異なる場合があります。「前の車もこのくらいだった」「家族の車と同じサイズだから同じだろう」と決めないことが大切です。
測るのは、できれば朝の出発前などタイヤが冷えている状態です。走行するとタイヤが温まり空気圧も上がるため、走行直後に指定値より高くなっていても、暖まったことによる上昇ならむやみに空気を抜きません。JATMAは、最低1か月に1度、走行前の冷えた状態でエアゲージを使って確認するよう案内しています。
空気圧不足は、見た目だけでは分かりにくいことがあります。4本を測ったら数値を簡単に記録しておくと、「右後輪だけ毎回低い」といった変化にも気づきやすくなります。補充後は空気漏れがないことを確認し、バルブキャップも戻します。
溝は1か所だけでなく、複数の位置を見る
次に確認するのが残り溝です。一般的な乗用車用タイヤでは、残り溝が1.6mmになると、主溝に設けられたスリップサインが現れます。国土交通省も、スリップサインが現れたタイヤは交換するよう案内しています。
ただし、外側から見える場所を1か所見るだけでは不十分です。タイヤは中央だけ減る、両肩が減る、内側だけ減るなど、均等に摩耗しないことがあります。安全な場所で複数箇所を見て、左右のタイヤでも減り方を比べます。
前輪はハンドルを切ると接地面を確認しやすくなりますが、車の下へ体を入れて無理に見る必要はありません。内側まで確認できない場合は、タイヤ販売店や整備工場で見てもらいます。
スタッドレスタイヤでは、もう一つ注意があります。一般タイヤとしての使用限度を示すスリップサインとは別に、冬用タイヤとしての使用限度を示す「プラットホーム」があり、JATMAは残り溝が新品時の50%未満になった冬用タイヤを積雪路・凍結路用として使用しないよう案内しています。「スリップサインが出ていないから雪道でも使える」とは限りません。
傷や釘は「抜いてから考える」のではなく、そのまま確認する
溝を見たら、トレッド面とタイヤ側面を一周します。釘や金属片、ガラスなどが刺さっていないか、深い切り傷、成長したひび、局部的なふくらみがないかを確認します。
異物が刺さっていても、その場で抜いて様子を見るのは避けます。JATMAは、異物を発見した場合はタイヤ販売店に相談したうえで取り除くよう案内しており、異物を抜くことで急激に空気が抜けるおそれがあるとしています。
特に、内部のコードに達する傷や局部的なふくらみは、次の交換時期まで様子を見る対象ではありません。空気圧が大きく下がっている、タイヤが変形しているなどの異常がある場合は、走れるかどうかも含めて専門店やロードサービスへ相談します。
細かな表面のひびを見つけただけで、すべて同じ対応になるわけではありません。ただし、ひびの深さや内部への影響は見た目だけでは判断しにくいため、成長している、範囲が広い、判断できないといった場合は実物を点検してもらうほうが確実です。
偏摩耗を見つけたら「減ったタイヤだけ交換」で終わらせない
中央だけ極端に減る、両肩だけ減る、片側だけ減る、左右で摩耗量が大きく違う。このような偏摩耗があるときは、交換するタイヤだけでなく、なぜその減り方になったのかも確認します。
空気圧の過不足だけでなく、装着位置や車両側の状態などが影響していることもあります。新しいタイヤに交換しても原因が残っていれば、同じ場所だけ早く減る可能性があります。
タイヤの位置を入れ替えるローテーションは、偏摩耗を抑える方法の一つです。ただし、回転方向が指定されたタイヤ、前後でサイズが異なる車などは、一般的な入れ替え方ができない場合があります。車の取扱説明書とタイヤの指定に従い、不明な場合は販売店へ確認します。
交換後も「新しくしたからしばらく見なくてよい」とは考えません。短期間で同じ場所が減る、同じ1本だけ空気圧が下がるといった変化があれば、タイヤ以外に原因が残っていないか点検してもらいます。
走行距離が少なくても「何年使ったか」を見る
あまり走らない車でも、タイヤの年数は確認します。タイヤはゴム製品なので、使用環境や保管条件、荷重、速度、空気圧などの影響を受けながら時間とともに状態が変わります。
JATMAは、使用開始後5年以上経過したタイヤについて、継続して使用できる状態かタイヤ販売店などで点検を受けることを勧めています。また、外観上は使用できそうでも、製造後10年経過したタイヤは新しいタイヤへの交換を勧めています。
ただし、「5年になったら必ず交換」「10年未満なら問題ない」という意味ではありません。JATMAも5年や10年を一律の使用期限や品質保証期限としているわけではなく、実際の状態によってはそれ以前に交換が必要になると説明しています。
購入時期が分からない場合は、タイヤ側面の製造番号を確認します。2000年以降に製造されたタイヤでは、製造番号の下4桁で製造年週を確認できます。中古車についていたタイヤや、使用頻度の少ない車、スペアタイヤの年数確認にも使えます。
月1回の点検は、この順番なら迷いにくい
- 取扱説明書や車両の表示で指定空気圧を確認する。
- タイヤが冷えている状態で4輪の空気圧をエアゲージで測る。
- 4輪の溝を複数箇所から見て、スリップサインと偏摩耗を確認する。
- トレッド面と側面に、傷、異物、ひび、局部的なふくらみがないか見る。
- 前回点検時と比べて、1本だけ空気圧や摩耗状態が大きく変わっていないか確認する。
- 使用年数が分からなければ、タイヤ側面の製造番号を確認する。
国土交通省も、タイヤの日常点検項目として、空気圧、亀裂・損傷、異常な摩耗、溝の深さを挙げています。スペアタイヤを積んでいる車は、スペアの状態も忘れずに確認します。
異常がなければ、点検した日をスマートフォンの予定表などへ残して終了です。長距離や高速道路を走る予定がある場合は、月1回の予定日を待たず、出発前にも確認します。
迷ったら「そのまま使用」「早めに点検」「走行前に相談」の3段階で考える
タイヤを見ても、交換すべきか判断できないことがあります。そのときは、自分で交換時期を断定するのではなく、対応の優先度を分けると整理しやすくなります。
- 月1回の確認を続ける空気圧、溝、傷、摩耗状態に異常がなく、前回から大きな変化もない。
- 早めに点検を受ける偏摩耗、繰り返す空気圧低下、気になるひび割れ、使用開始から5年以上経過したタイヤなど。
- 走行を続ける前に相談するスリップサインの露出、コードに達する傷、局部的なふくらみ、急な空気圧低下、走行中の強い振動や異音など。
走行中に操縦が不安定になる、異常な音や振動を感じるといった場合は、安全な場所へ停車して状態を確認します。外観では原因が分からない場合でも、JATMAはタイヤ販売店などへ点検を依頼するよう案内しています。
自宅での点検は、異常を発見するためのものです。ジャッキアップして見えない場所まで無理に調べたり、刺さった異物を抜いて原因を確かめたりせず、「判断できないものを専門店へつなぐ」ところまでをセルフチェックと考えます。
出典
- 国土交通省「安全な自動車に乗ろう! 日常点検」(確認日:2026年9月25日)
- 国土交通省「自動車には日常点検や定期点検が義務付けられています」(確認日:2026年9月25日)
- 一般社団法人 日本自動車タイヤ協会「タイヤのおはなし(乗用車用タイヤ編)」(確認日:2026年9月25日)
- 一般社団法人 日本自動車タイヤ協会「安全に乗るために」(確認日:2026年9月25日)
- 一般社団法人 日本自動車タイヤ協会「タイヤの空気圧」(確認日:2026年9月25日)

