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車検と12ヶ月点検、どちらも同じ「車の点検」だと思っていませんか?
「この前、高いお金を払って車検を受けたばかりなのに、また12ヶ月点検の案内が来た…」「どっちも同じような点検でしょ?両方受ける必要あるの?」このように、2つの点検の違いがよく分からずに、悩んでしまった経験はありませんか?
実は、「車検」と「法定12ヶ月点検」は、その目的も、法律上の義務の重さも、全く異なるものなのです。この違いを知らないと、不要な整備にお金を払ってしまったり、逆に、必要なメンテナンスを怠って、愛車の寿命を縮めてしまうことにもなりかねません。
この記事では、そんな2つの点検の決定的な違いと、受けなかった場合の罰則の有無、そして、賢い受け方までを、初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。この記事を読めば、もう2つの案内に惑わされることはありません。
【結論】車検は「義務(罰則あり)」、12ヶ月点検は「義務(罰則なし)」!
「車検」と「法定12ヶ月点検」、この2つの最も大きな違いは、受けなかった場合の罰則の有無です。どちらも法律で定められた点検ですが、その義務の重さが全く異なります。
一言で結論を言うと、『車検は、受けないと公道を走れなくなる、罰則付きの義務』であり、『12ヶ月点検は、受ける義務はあるが、受けなくても直接的な罰則はない』のです。この違いを生んでいるのが、それぞれの「目的」です。まずは、2つの点検の概要をポイントで見ていきましょう。
「車検」と「12ヶ月点検」早わかり比較
【車検】(自動車継続検査)
- 目的:その車が、国が定める安全・環境基準(保安基準)に「その時点で」適合しているかをチェックする検査。
- 義務:受けないと公道を走れない。罰則あり(免許停止、罰金など)。
- 特徴:あくまで「検査」なので、次の車検までの安全を保証するものではない。人間でいえば「健康診断」。
【法定12ヶ月点検】
- 目的:故障を未然に防ぎ、車が安全に走り続けられるようにするための健康診断(予防整備)。
- 義務:受ける義務はあるが、受けなくてもドライバーへの直接的な罰則はない。
- 特徴:人間でいう「人間ドック」。車のコンディションを良好に保ち、寿命を延ばすために重要。
このように、車検は「公道を走るための許可」を得るためのもの、12ヶ月点検は「愛車の健康を維持する」ためのもの、という根本的な違いがあります。次のセクションでは、それぞれの違いを、点検項目や費用なども含めて、さらに詳しく解説していきます。
【徹底比較】「車検」と「法定12ヶ月点検」5つの違い
ここからは、「車検」と「法定12ヶ月点検」の5つの主な違いについて、一つずつ詳しく解説していきます。このセクションを読めば、なぜ両方が大切なのか、その理由がハッキリと分かります。
それぞれの目的:「保安基準の確認」と「故障の予防」
2つの点検は、似ているようで、その目的が全く異なります。
車検の目的は、あくまでその車が、その検査の時点で国が定めた『最低限の安全・環境基準(保安基準)』をクリアしているかを確認するためのものです。人間でいえば、「身長、体重、視力だけを測る、ごく簡単な健康診断」のようなもの。この検査に合格しないと、公道を走る許可が与えられません。逆に言えば、次の車検までの安全を保証してくれるものではないのです。
一方、12ヶ月点検の目的は、『故障を未然に防ぎ、車の良好なコンディションを維持すること』です。ブレーキの内部やサスペンションなど、普段見えない部分まで分解してチェックする「予防整備」が中心となります。人間でいえば、「血液検査や内視鏡検査も行う、本格的な人間ドック」です。次の点検まで、安心して快適に乗り続けるために行います。
目的・費用・時期は?項目別比較表
2つの点検の具体的な違いを、より分かりやすくするために、項目別に比較した表を見てみましょう。
| 比較項目 | 車検 | 法定12ヶ月点検 |
|---|---|---|
| 目的 | 国の基準に適合しているかの検査 | 故障を未然に防ぐための健康診断 |
| 法的義務 | 義務(受けないと公道走行不可) | 義務 |
| 罰則の有無 | あり(免許停止・罰金など) | なし(ドライバーへの直接罰則) |
| 点検項目数(自家用車) | 56項目(機能が正常かどうかの確認が主) | 26項目(分解して内部まで点検するのが主) |
| 費用目安 | 5万円~10万円以上 | 1万円~2万円程度 |
| 実施時期 | 2年に1回(新車初回は3年) | 1年に1回 |
受けないとどうなる?罰則の有無と、本当のリスク
車検を受けずに、または有効期限が切れた状態で公道を運転することは、道路運送車両法違反となり、非常に厳しい罰則が科せられます。
- 無車検運行:違反点数6点(一発で免許停止30日)+ 刑事罰(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)
- 自賠責保険切れも重なると、さらに違反点数6点が加算され、合計12点(免許停止90日)+ より重い刑事罰が科せられます。
一方、法定12ヶ月点検は、受けることが法律で義務付けられてはいますが、受けなかったとしても、車の使用者(ドライバー)に直接的な罰則はありません。これが、「車検は必ず受けるけど、12ヶ月点検は受けない」という人がいる大きな理由です。
しかし、罰則がないからといって、点検を怠ることは大きなリスクを伴います。それは、定期的なメンテナンスを怠ったことによる、突然の故障や事故のリスクです。また、将来車を売却する際に、整備記録がないことで査定額が下がってしまうという、金銭的なデメリットにも繋がります。
【実践ガイド】車検と12ヶ月点検、賢い受け方と費用を抑えるコツ
車検と12ヶ月点検、どちらも安全のために重要な点検ですが、少し工夫するだけで、その費用を賢く抑えることができます。ここでは、具体的な3つのコツをご紹介します。
コツ①:ディーラーの「点検パック」などを活用し、セットで受ける
車検と12ヶ月点検は、別々に受けるよりも、同じ業者にまとめてお願いするのが最も効率的で、費用的にもお得です。多くのディーラーでは、新車購入時に「メンテナンスパック」や「点検パック」といった、数年分の点検費用(車検と12ヶ月点検を含む)を、割安な料金で前払いできるプランを用意しています。
こうしたパックを利用すれば、個別に依頼するより総額が安くなるだけでなく、点検時期が近づくとディーラーから案内が来るので、「うっかり忘れてしまった!」という心配もありません。特に、車のメンテナンスに詳しくない方ほど、こうした「おまかせプラン」を活用するのが賢い選択です。
コツ②:「車検」は複数社から相見積もりを取る
法定12ヶ月点検の料金は、業者による価格差が比較的小さいですが、車検の「整備費用」は、業者によって数万円単位で大きく異なります。ディーラーは、純正部品を使った質の高い整備と絶対的な安心感が魅力ですが、料金は高め。一方、車検専門店やガソリンスタンドは、料金が安い傾向にあります。
車検の時期が近づいたら、面倒くさがらずに、必ず2~3社から見積もり(相見積もり)を取りましょう。最近では、ネットサイトを使えば、近所の業者の料金を自宅で簡単に比較できます。他社の安い見積もりは、価格交渉の際の最強の武器になります。
コツ③:見積もりの「予防整備」項目をしっかり見極める
車検の見積もりには、法律上必須の点検の他に、『まだ使えるけど、早めに交換した方が安心ですよ』という、業者からの「予防整備」の提案がたくさん含まれています。これが、車検費用が高くなる最大の原因です。
見積もりを見ながら、「この部品交換は、今回やらないと車検に通りませんか?」と、一つひとつ質問していきましょう。そして、必須でないと分かった「予防整備」については、「バッテリーは先日替えたばかりなので、今回は大丈夫です」といったように、具体的な理由を添えてハッキリ断る勇気を持ちましょう。これだけで、数万円単位の節約が可能になります。
【初心者さんのギモン】車検と法定点検に関するよくある質問
- Q1. 最近、12ヶ月点検を受けたばかりです。それでも、もうすぐ来る車検は受けなければいけませんか?
- A. はい、必ず受けなければいけません。この記事で解説した通り、「12ヶ月点検」と「車検」は、その目的も、法律上の意味も全く異なるものです。12ヶ月点検は、あくまで「健康診断」のようなもの。一方、車検は、公道を走るための「許可」を国から得るための「検査」です。12ヶ月点検を受けていても、車検を受けなければ公道を走れなくなり、厳しい罰則の対象となります。
- Q2. ディーラーで車検を受けたら、「次の12ヶ月点検はやらなくてもいいですよ」と言われました。本当ですか?
- A. 法律上の「義務」はありますが、受けなくても罰則がないため、そのように案内するディーラーも存在します。特に、車検時には12ヶ月点検以上の項目(24ヶ月点検)を入念に行うため、「車検の合間の一年後は、よほど乗り込んでいなければ大丈夫」というニュアンスです。しかし、安全のためには受けるのが理想です。特に、年間走行距離が多い方や、車の少しの変化にも気づきたい方は、受けておくことをお勧めします。
- Q3. 点検を受けた後、どこを点検・整備したのか、記録はもらえますか?
- A. はい、もらえます。車検や12ヶ月点検を業者に依頼すると、作業完了後に「点検整備記録簿」という書類が渡されます。これには、どの項目をチェックし、どの部品を交換・整備したかが、整備士によって細かく記録されています。この記録簿は、あなたの愛車がしっかりメンテナンスされてきたことの「証明書」になります。大切に保管しておき、将来車を売却する際には、査定士に必ず提示しましょう。
- Q4. フロントガラスに貼ってある丸いステッカーは何ですか?車検のシールとは違うのですか?
- A. 四角いシールが「車検ステッカー(検査標章)」で、次回の車検満了年月を示しています。一方、丸いステッカーは「法定点検ステッカー(ダイヤルステッカー)」で、次回の法定点検の時期を示しています。これは、法定点検を実施した整備工場が発行するもので、貼る義務はありません。車検ステッカーと混同しがちですが、全くの別物だと覚えておきましょう。
- Q5. 12ヶ月点検は、自分でやることもできますか?
- A. 法律上は、車の使用者自身が点検を行う「ユーザー点検」も認められています。しかし、12ヶ月点検には、ブレーキの分解点検など、専門的な知識と工具、そして安全な作業スペースが必要です。知識のない方が見様見真似で行うのは非常に危険であり、かえって車を傷めてしまう可能性も。安全と確実性を考えれば、費用を払ってでも、信頼できるプロの整備士に任せるのが、最も賢明な選択と言えるでしょう。
【まとめ】2つの点検の違いを理解し、安全でお得なカーライフを
今回は、「車検」と「法定12ヶ月点検」の、似ているようで全く違う2つの点検について解説しました。結論は、どちらも法律で定められた義務ですが、その目的と罰則の有無が大きく異なる、ということでしたね。
この2つの違いを、もう一度おさらいしましょう。
- 車検:公道を走るための「許可」を得る検査。罰則あり。
- 12ヶ月点検:愛車の健康を維持するための「健康診断」。罰則なし。
安全なカーライフのためには、どちらの点検も重要です。特に、有効期限が定められている車検は、うっかり切らしてしまうと大変なことに。あなたの愛車の車検満了日はいつですか?まずは、フロントガラスのステッカーや車検証で、次の満期日を確認することから始めてみましょう。