電動化でも失わないAMGの“鼓動”
メルセデスAMGは次世代高性能EV『コンセプトAMG GT XX』で、従来のV8/V12エンジンが持つ重厚なサウンドや振動、ギアチェンジの感触をあえて再現する戦略を打ち出した。ヘッドライト内蔵スピーカーでエンジン音を演出し、振動アクチュエーターで鼓動をフィードバック。英国Yasa社製アキシャルフラックスモーターの柔軟性を活かし、従来のスポーツカーが奏でるエモーショナルな体験をEVにもたらすことで、熱心なファンの理解を得る狙いだ。
電動ドライブの“音感覚”が切り拓く未来
電動化が進む中で、AMGは“静かすぎる”EVへの違和感を逆手に取り、あえてエンジンの鼓動を再現するアプローチを採用しました。特に「ギアチェンジ」の振動まで模擬するという徹底ぶりには驚かされます。従来は音と振動で得られていたドライバーの興奮を、電動モーターでも味わえるようにする意欲的な試みです。
運転中のワクワク感は、単に速さだけではなく、耳と身体への刺激にも大きく依存します。AMGらしさを失わず、EVの静謐さと伝統的なスポーツカーの興奮を両立させる手法は、他ブランドにとっても一つの指針になりそうです。
また、Yasa社製モーターの採用が示すように、高出力と繊細な制御を両立する技術が不可欠だったことがうかがえます。これにより、「パワーは本物」「感覚も本物」という二律背反を克服し、電動モデルのパフォーマンス評価基準を変える可能性を秘めています。
一方で、デジタルで創出する“本物らしさ”がどこまで受け入れられるかは未知数です。純粋なEVファンには不要に映るかもしれませんが、内燃機関のファンには魅力的に映るはず。AMGが目指すのは、両者をつなぐ架け橋でしょう。今後の動向から目が離せません。